心向く先はいつも



<貴方、結構顔色悪いわよ?>
そう言ったのは、隣人の小さな科学者、哀だ。たまたま、買い物から帰ってきたところで出会ったのだが、開口1番にそう言った。それ程に、自分の顔色が悪いということなのだろう。

「………………まいった、な」

快斗はふぅとため息を付いた。
新一が事件のために大阪に行ってから、もう、3日。
他の場所ならば、まだ耐えられただろうに。自分にとってもはや害としか言えないような人間が、新一の傍にいることに、どうしようもないくらいの苛立ちを感じてしまう。今持っている包丁で、何かをめった刺しにすれば気分は晴れるだろうか。なんて、普段は考えもしないようなことまで頭に浮かんできてしまった。

(………駄目だ、料理する気になれないや)

これまた普段はやらないような、作りかけの料理を全部捨てる。今日はコンビニの弁当でいいや。健康には悪そうだけど、何かを破壊するよりはいいだろうし。
サイフをポケットにねじ入れて、外に出ようとすると。手に持っていた携帯電話が振動した。すぐさま開いて通話ボタンを押せば、

<快斗?>

愛しい愛しい、彼の声。
透き通るような声に、憂えていた自分の心がすぅっと晴れていくのを感じる。事件が終わったからもうすぐ帰るという彼の言葉を聞きながら、快斗は、迫り上がってきた感情をそのままに口にした。


「――――愛してるよ」






  
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全て愛しき日常風景の25話。
新一を深く愛しているからこそ、傍にいないと不安定になる精神。それに拍車をかける、目障りな存在。
心の暗闇ゆえに生まれた殺意にすら身を任せてしまいそうになる心。昏く荒んでいく快斗の心を光のなかに戻すのは、愛しいひとの声---なんてステキなシチュエーションv
ダークな快斗なんてもろ私好み♪ 暗く沈んでいくのも、一瞬にして心に光が満ちるのも新一。
何度読んでもうっとりしてしまうお話です。





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